明晰夢を扱った映画「パプリカ」。感想から作中の表現は実在するのかなどを紹介します。
あらすじ
主人公の敦子は研究員の仕事をしている。チームメンバーの1人が他人の夢に入り込むことができる装置「DCミニ」を開発した。
敦子は仕事の傍ら夢の中の姿「パプリカ」として悪夢を見る患者の夢に入り込んで治療を行っていた。
ある日、「DCミニ」が盗まれ、敦子の周りで精神崩壊を起こす人が多発する。敦子は被害者の夢の中に入り込んでパプリカとして犯人探しを始める。
感想
わけわかんないけど面白い!
ストーリーは一貫してDCミニを盗んだ犯人探しなので難しくない。
現実のシーンとして進んでいるが、実はどこかで夢になっているんじゃないか?どっちだろうと頭のどこかで疑いながら見るのも楽しい。
映画の中では夢らしい表現が多く描かれています。
看板の広告や絵のような平面の中を自由に出入りしたり、足元が歪んで走れないなど、夢らしい描写が随所に散りばめられていて、夢でありそうな場面をよく表現してくれた!と思いました。
これは映画特有の表現だと思ったのが、夢の中で覚醒している人と会話する時に、動物や模様に相手を当てはめている場面です。
普段の夢ではあり得ないことなので、「なるほど」と思わせるシーンでした。
などなど、思うことはたくさんありますが、見終わった私が思うのは3つです。
- パプリカがかわいい
- ハードボイルドな刑事
- 悪夢のパレードが気持ち悪い
パプリカがかわいい
オープニングで夢の中を自由自在に楽しむ姿、空を飛ぶ躍動的なシーンなど見所が満載。
冷静沈着な現実の千葉とは正反対で、夢の中のパプリカ(千葉)は優しく包容力に溢れます。掴みどころの無い所もあり、誰もが彼女の魅力の虜になるでしょう。
妖精で飛んでいる時はサービスショットもありました。
ただ完璧なコントロールができるわけでは無いようで、時に敵に捕まって動けなくなることも。
ハードボイルドな刑事
見た目は頑固だが、心の中では死んだ親友のトラウマに悩まされている。
廊下で犯人と対峙するトラウマの場面が何度も出てくる。
同じシーンだが次はどうするんだろうとワクワクしながら見ていた。
壁を力ずくで突破するシーンは「明晰夢のコントロールができない」事がよく分かる場面でした。
悪夢のパレードが気持ち悪い
多くの人に嫌悪感を持たせる表現。
この行進、気持ち悪いだけではない。無数の人形や家電がいるがどこを見てもしっかり書き込まれているので目が離せない。
何のパレードなのか、目的地はどこなのか・・?
パレードのシーンが出るたびに「夢にでてきたらどうしよう」と心配になるような気持ち悪さでした。
夢の中でパプリカのように自由に動くことはできるか
パプリカは空を飛んだり、妖精に変身したりと自由な発想を再現しています。
こんなことできるのでしょうか?
実は明晰夢を見慣れた人であればできる範囲です。
夢でやりたいことは?と聞かれると空を飛びたいと思う方が多いのではないでしょうか。
パプリカ(千葉)も最初から飛べたわけではないと思います。
夢の中で空を飛ぶにはコツがあるので気になる方はこちらの記事を参考にしてください。
DCミニは存在するのか!?
作中で登場する他人の夢に入り込むことができるアイテム、DCミニですが、実際に存在するのでしょうか?
現状としては、DCミニに似た具体的なアイテムは存在しません。
映画「パプリカ」の世界におけるDCミニは、架空の技術として描かれています。
現時点では、明晰夢において他人の夢に直接入り込むことや操作することが可能な具体的な技術は確立されていません。夢の世界は個人の内面の表現であり、他人の夢に入り込むことは困難な領域です。
しかし、現実世界では他人がどのような夢を見ているのか解析する研究が進行しています。科学の分野では、脳活動の測定や画像解析などを通じて、夢の内容を一部推測する試みが行われています。
他人の夢をモニターで見る方法
パプリカでは夢の内容をモニターへ映し出して起きている人が見ているシーンがあります。
こんなことできるのでしょうか?
こちらは別々の機関ですが、寝ている人の脳波から見ている内容を映像化することに成功しています。
起きているときに画像を見たときの脳波と夢の中で同じ脳波を比べることで夢の内容を解析する事に成功している。
https://first.lifesciencedb.jp/archives/6930
ヒトが画像(例:風景・文字)を想像することで、同じ意味の画像を画面に表示する技術を開発した
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20220318-2/pdf/20220318-2.pdf
精度は素人目に見ても高いとは言えませんが、研究が進めば他人の夢をモニターで見る日が来るかもしれません。
他人の夢に入ることはできるのか?
普通の夢は意識を持っているのは自分一人だが、パプリカでは1つの夢に複数人の意識が混在しています。
夢を共有するための具体的な技術については、映画の中で明示的に説明されていません。
DCミニは、相手の脳に直接信号を送ることで夢にアクセスする装置と考えられます。ですが普通に考えると夢を見ている人と夢に入り込む人の双方がDCミニを使用しなければならないはずですが、ストーリーの構成上その必要は無しになっています。
もし他人の夢に入ることができたとしたら、基本的には相手の動きを自由に見ることができると考えられます。
ただし、夢の世界は一人称の視点で構成されているため、見えていない部分は実際には存在しないはずです。夢は個人の脳内で生成されるイメージであり、その範囲は制限されています。
他人が行動できる範囲や見えていない部分を完全に表現することは困難です。
例えば、非常に広範囲で高解像度の夢を作り出すことができる人が存在する場合、そのような表現が可能になるかもしれません。しかし、一般的な人間の脳では、見える範囲を完全に鮮明に再現することも難しいです。
高性能なコンピュータが夢の世界を生成し、そこへDCミニで接続するという方法であれば、将来的には実現可能性があるかもしれません。
これはメタバースやマトリックスのような概念に近いですね。
夢を共有する注意点
夢には2つの特性があります。
- 自分自身の意識しか存在しない
- 自由にコントロールできる
1つ目の特性、「自分自身の意識しか存在しない」は、夢の中で深層心理をさらけ出しても構わないことを意味します。深層心理とは、イドと呼ばれる無意識の領域に関わる要素です。
イドとは?
自覚されていない過去の経験や、「~がしたい」「~がほしい」といったさまざまな欲求などが無秩序に存在しています。
https://kokoro-you.com/2021/10/31/ego/
普段の日常では、自我という心の働きによってこれらの欲求を抑制し、社会的な行動をとるようになっています。しかし、夢の世界では自我の制約から解放され、欲求を自由に解放することができます。
2つ目の特性、「自由にコントロールできる」は、夢の中で魔法のような行動や想像力豊かな体験をすることができることを意味します。個人によって差はありますが、明晰夢に慣れると夢の中でできることの範囲が広がることがあります。
しかし、他人と夢を共有する場合は、1つ目の特性が失われます。つまり、自我を保ったまま行動しなければなりません。
夢は普段の生活で社会的な制約の中で抑えている欲求を解放できる場面でもあります。しかし、他人の意識が夢の中に存在すると、自由に欲求を解放することは叶いません。
他人と夢を共有する際には、欲求を解放しすぎると社会性に反する行動となり、相手から批判や軽蔑を受ける可能性があります。夢の中では何でも許されるという考えは当てはまりません。
夢を共有する場面は、オンラインゲームの仮想空間にいるようなものです。他人との関係や社会的なルールに敏感になり、相手を尊重する姿勢が求められるでしょう。
まとめ
「パプリカ」は夢とアニメーションの表現を融合させた作品であり、観る者に次に何が起こるのかというワクワク感を与えてくれます。
明晰夢という神秘的な体験に興味がある方や、非現実的な世界に魅了される方には特におすすめの作品です。
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